11月市議会の最終本会議が12月13日開かれました。南北幹線道路の建設に伴う市民プールの移転をめぐり、被爆者や市民団体が陸上競技場の現地存続を求めた請願は、残念ながら否決されてしまいました。
長崎市は費用面などから市民プールを陸上競技場に移し、400メートルトラックは茂里町の下水処理場跡に整備するとしています。これに対して、被爆者4団体や市民団体など計8団体は、「平和公園西地区の松山陸上競技場はお金に変えられない価値がある」などとして競技場の現地存続を求める請願を提出しました。
最終本会議では、請願を「不採択」とした建設水道委員会の報告に対して、私は「経済比較の妥当性に疑問があるうえ、スポーツと健康増進を中心に多くの市民が集い交流する場となっている今の松山陸上競技場は市民の宝。被爆者や利用者の理解なしに進めて良いはずがない」と請願不採択に反対の討論を行いました。採決の結果、賛成30、反対6の賛成多数で「不採択」となりました。(平和公園問題市民連絡会のニュースにより詳しく書かれてあります)
請願人らは議会に抗議声明を提出
不採択を受けて、被爆者・市民団体らは、「市政を監視する議会としての機能を果たさず、利用者・市民の声に背を向けた」として議長宛の声明文を議会事務局に提出しました。今後も引き続き、松山陸上競技場の存続のために力を尽くします。
最終本会議で述べた討論を紹介します。
次に請願第6号「長崎市営松山陸上競技場の現地存続を求める請願」について、不採択に反対する理由を3点述べます。
第1の理由は、議論すべき問題点がまだ多数残されていることです。被爆者の方が訴える被爆資料の扱いをめぐる現地被爆遺構調査、スライダーや流水プールの整備等、まだまだ不確定な要素が多すぎること。また、市民団体が高校生の声を紹介したことに対し、その意見が「学校としてか、部としての意思か」など長崎市が確認を行ったことは、子どもの意見表明権を侵害するものであり、見過ごすことはできません。
第2の理由は、経済比較の妥当性の問題です。中部下水処理場跡地の地下構造物の撤去費について、県はまだ検証しておらず、移転補償費の中に含まれる可能性があります。長崎市は、新プールに対する国の補助金について、市民プールを松山に移転した場合、国から補助金が最大で51億円交付されるといいますが、県支出の移転補償費約51億円には国庫補助が入ることが想定されます。国土交通省都市局公園緑地・景観課に問い合わせたところ、国の補助金がプールの移転補償費に含まれており、国の補助を受けるには、移転補償費で整備する箇所とそうでない箇所の切り分けをする必要があるとのことでした。こちらから、「長崎市は新プールの整備費を約100億円としており、移転補償費で約51億、国からの補助で最大約51億を想定している」と伝えたところ、「設計の段階から切り分けをしたうえで、移転補償費で整備しない約50億が補助対象事業となり、その2分の一、25億が国からの補助になる計算になるだろう」との説明でした。最大80億の差があるという市の説明は非常に疑問です。請願者から「国の補助金を二重取りしている」との指摘にはついて、担当部長は「確認したい」と答弁したまま、いまだに議会に明確な説明をしていません。「慎重丁寧な審議を求めた請願」を全会一致で承認した議会に対しても、松山陸上競技場の存続を求める市民団体に対しても、不確定な資料を示した市の責任は重大です。
第3の理由は、平和公園西地区にはお金でははかれない価値があることです。市が示した再配置の方針では、約35万人が利用している松山陸上競技場の機能が損なわれてしまいます。景観や開放的な空間が失われ、いまのように安心して伸び伸びと体操やレクリエーション、リハビリなどを行うことができなくなります。災害時に期待される機能の縮小も、避けられません。スポーツと健康増進を中心に多くの市民が集い交流する場となっているいまの松山陸上競技場は、まさに平和の大切さを発信している市民の宝です。原爆の廃墟から復興へのスタートをきった長崎にとって平和公園はまちづくりの原点です。平和公園スポーツゾーンの中心的な施設である松山陸上競技場は現在のまま残し、さらに充実させていくことこそ必要です。市長は、本定例会初日の行政報告において、道路事業の早期完成のために、平和公園スポーツ施設の再配置について早急に方針を決める必要があると述べられましたが、被爆者団体や利用者市民の理解を抜きに先にすすめていいはずがありません。
これらの理由から、本請願はせめて継続審査とすることが求められていると強く訴えるものです。
この問題について議論する場を与えてくれた皆さんに心から感謝を申し上げ、議員諸氏の賛同を求め、請願不採択に反対の討論といたします。
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